皆さんは「食養生」と聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか?
なんだか難しそうだったり、手間がかかりそうだったりして、思わず身構えてしまう方もいるかもしれません。

しかし、食養生の醍醐味こそ、まさに無理なく、日々の生活に取り入れられる健康法であるということ。いつもの食事にほんのちょっと意識を向けるだけで、誰でも簡単に始められるセルフケアなのです。

この記事では、食養生の基礎となる東洋医学(中医学)の考え方と、体質別のおすすめ食材をご紹介します。

食養生とは?古来より伝わる生活の知恵

私たちは健康に不安を感じると、病院を受診することが多いですよね。
風邪をひけば風邪薬、高熱が出たら解熱剤、胃が痛むときには胃薬……といったように、症状にあわせて薬を処方してもらったり、市販薬を求めてドラッグストアを訪れることもあるでしょう。

こうした生活を送っていると、「カラダは食べたもので作られている」という当たり前の事実をつい見落としてしまいがちです。毎日の食事は、一見些細なことに思えるかもしれませんが、その小さな積み重ねこそ、心身を健やかに保つための基盤となるのです。

中医学のイメージ写真

そのため、東洋医学には「食養生」というアプローチが存在します。
西洋医学が主に薬を用いて心身の不調を改善しようとするのに対して、東洋医学では、食事そのものを健康維持や病気の治療に活用します。

また、東洋医学の本場・中国には「薬食同源(やくしょくどうげん)」という言葉があります。
薬と食の源は同じ=すべての食物には薬と同じような効果があるという意味を持つ言葉で、「薬膳」のベースとなる思想です。

食材の属性や効果を正しく理解し、日々の食事に取り入れることで、健康づくりに役立てる――これが約4000年の歴史を持つ東洋医学の知恵であり、食養生の核となる考え方なのです。

気血水の流れを整えることが健康の基本

食養生の目的は、日常の食事をとおしてカラダのバランスを整え、健康を維持することにあります。
そして、その「バランス」を判断する指標となるのが「気血水(きけつすい)」です。

東洋医学では、人のカラダは気・血・水の3つの要素で成り立っていると考えられています。
これらの要素をスムーズに循環させるには、適切な食材選びや調理法の工夫が欠かせません。気血水の流れが整うことで、内臓が養われ、心身ともに健康を維持することができるのです。

  • 気…エネルギーの源。体温の維持など、生きるために必要なさまざまな働きを担っています。
  • 血…血液を含む、体内を流れる赤い液体。全身に潤いや栄養を届け、精神状態にも影響を与えます。
  • 水…赤い液体以外の体液(別名「津液(しんえき)」)。余分な熱を抑えるなど、調和を保つ役割を果たします。

これらは密接に関係しており、どれかひとつでも不足したり滞ったりすると、不調を引き起こす原因となります。

体質別!おすすめ食材|気血水で健康管理

それでは、気血水に基づいた体質別の特徴6選と、それぞれのタイプにおすすめの食材をご紹介します。
チェックポイントは、「内臓を映しだす鏡」といわれる舌の状態、個人差が表れやすい生理の状態、そして食の好みの3つです。

心当たりのあるカラダのサインを手がかりに、健やかな毎日を過ごすためのヒントを見つけてみましょう。

エネルギーが不足しているかも?「気虚タイプ」

  • 舌の状態…全体的に淡い色、舌の縁に歯形がつく
  • 生理の状態…周期が短め、生理期間中は体調を崩しがち
  • 食の傾向…甘いものをよく食べる

気が不足しているため、暴飲暴食や冷たいものなど、体力を消耗する食事はNGです。エネルギーを補う食材を積極的に摂りましょう。

おすすめ食材
白米、芋類(山芋、さつまいもなど)、肉類など

気のめぐりが悪い「気滞タイプ」

  • 舌の状態…左右の両端が赤みを帯びている
  • 生理の状態…PMSが重め、生理不順
  • 食の傾向…ハーブなど香りのいいものを好む

おなか周りの張りや胸の圧迫感はありませんか?また、イライラしやすかったり、気分が落ち込みやすいのもこのタイプの特徴です。気のめぐりを整える食材やリラックス効果のあるハーブティーを活用しましょう。

おすすめ食材
ねぎ類、柑橘類、大根、スパイス類など

血が足りていない「血虚タイプ」

  • 舌の状態…全体的に淡い色、舌が薄く見える
  • 生理の状態…経血量が少なく遅れがち、頭痛を伴う場合も
  • 食の傾向…魚や肉が苦手、偏食気味

肌や髪の毛の乾燥や、立ちくらみが気になる方は血が不足しているかもしれません。赤色や黒色の食材には、血を補う働きを持つものが多いので、意識的に取り入れましょう。

おすすめ食材
赤身の魚(かつお、まぐろ、ぶりなど)、にんじん、黒ごま、黒豆、ひじきなど

汚れた血でドロドロに「瘀血タイプ」

  • 舌の状態…赤黒い、または紫色、裏側の静脈が浮き出ている
  • 生理の状態…生理痛が激しい、経血が黒ずんでいて塊が混じる
  • 食の傾向…脂っこいもの、甘いもの、冷たいものを好む

生野菜サラダや豆腐など、体温より温度の低いものには、血の流れを鈍くする働きがあるので要注意!一見カラダに良さそうに思える乳製品も、このタイプには禁物です。

おすすめ食材
玉ねぎ、鯖、味噌、お酢、黒砂糖など

津液が不足している「陰虚タイプ」

  • 舌の状態…全体的に赤い、舌苔が少なく乾燥気味、亀裂が入っている場合も
  • 生理の状態…生理周期が短め
  • 食の傾向…冷たい飲みものを頻繁に摂っている

喉が渇きやすく、便秘になることが多い場合は、津液が不足しているサインです。こまめな水分補給はもちろん、白色の食材にも潤いを補う効果が期待できます。

おすすめ食材
乳製品、豆腐、れんこん、山芋、ほたて、鴨肉、ハチミツなど

水代謝が上手くできていない「水滞タイプ」

  • 舌の状態…ぼてっとした大きな印象、舌苔が厚く粘り気がある
  • 生理の状態…生理周期が長め、経血がドロッとしている
  • 食の傾向…脂っこいものや甘いもの、味の濃いものを好み、水分を多く摂っている

津液は流れが滞ると、汚れた水である「湿」に変化してします。溜まった湿は、喘息や浮腫みなどさまざまな不調の原因に。利尿作用のあるはとむぎ茶など、余分な水分を排出する働きを持つ食材を摂りましょう。

おすすめ食材
玄米、牛タン、あずきなど

\それぞれの体質にあわせた漢方はこちら/

いつもの食事をちょっと見直して、健やかな毎日を

毎日の食生活をちょっと見直すだけで、ココロとカラダのバランスを整えることができます。
また、食事だけでなく、適度な運動やじゅうぶんな睡眠、リラックスする時間を設けることも大切です。これらを上手に組みあわせることで、病気になりにくい丈夫な心身を育むことができます。

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無理なく続けられる方法で、健やかな毎日を叶えましょう!