日本人にとって、身近な旅行先のひとつ 「台湾」。
台湾には、現地の人々にとって欠かせない「台湾茶」が気軽に楽しめる「茶芸館」と呼ばれる喫茶店が各地に点在しています。

近年では、台湾のお茶文化を象徴するかのようなレトロモダンな雰囲気が世界的に注目を集め、観光スポットとしても人気が高まりつつあります。

そこで今回は、旅行前必読!異国情緒に浸るだけではもったいない茶芸館の世界と、茶芸館で提供されている台湾茶の魅力についてご紹介したいと思います。

伝統的な台湾茶を提供する東洋版のティーサロン「茶芸館」

茶芸館とは、伝統的な作法に基づいて、専用の茶器で淹れたこだわりの台湾茶を提供する喫茶店のこと。「茶藝館」「茶館」「茶桜」「茶坊」「ティーハウス」など、さまざまな呼称で親しまれ、人々の生活に寄り添う場所として愛されてきました。

茶芸館では、のんびりと過ごすことが前提とされているため、利用料は茶葉代とお湯代、もしくはセット料金が設定されている場合がほとんど。また、お茶にあう茶菓子や軽食、茶葉料理とともに提供されることが多く、ゆったりとした優雅なひとときを楽しむことができます。

家具や内装、ロケーションに凝ったお店も多く、例えるなら「東洋版のティーサロン」のような存在です。

ちなみに、最近日本でも人気の”アフタヌーンティー”の本場、イギリスには一日に7杯もの紅茶を飲む習慣があるそう。英国人にとってティーハウスが日常を彩る場所であるように、茶芸館もまた、台湾の人々の暮らしに豊かさをもたらしてくれる場所なのです。

カラダ漢方スタッフが九份で最も有名な茶芸館「阿妹茶樓」に行ってみた!

台湾といえば、ノスタルジックな風情漂う”九份(きゅうふん)”を思い浮かべる方も多いはず。
台北から東北へ30kmほど離れた山間の町で、19世紀末から20世紀初頭にかけて金鉱で栄えた歴史を持ちます。まるで当時にタイムスリップしたかのような、幻想的な街並みで知られており、茶芸館が多いことでも有名です。

町の中心を貫く石畳の路地「豎崎路(けんざきろ)」沿いには、独特な雰囲気をより一層引き立てるかのように、趣のある茶芸館が建ち並んでいます。
なかでも、ひときわ存在感を放っているのが「阿妹茶樓(あめちゃろう)」です。カラダ漢方スタッフも見た目のインパクトに惹かれて、立ち寄ってみることに…。

九份の街並みを一望できるテラス席で、台湾茶と可愛らしい茶菓子をいただきました。

店内からの眺めも素晴らしく、象徴的な赤い提灯に照らされた九份の町の景色は、まさに忘れることのできない旅の思い出になりました。

実はこの茶芸館、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』の舞台のモデルになったという噂もあるとか。九份を訪れる際にはぜひ、阿妹茶樓で神秘的な体験を味わってみてください。

阿妹茶樓の詳細
住所   :224 台湾 New Taipei City, Ruifang District, 市下巷20號 / Google Mapで開く
公式サイト:https://www.a-meiteahouse.com/
公式SNS :Instagram / FaceBook

独自の進化を遂げた台湾茶の歴史

特別な癒しの時間を提供してくれる茶芸館ですが、そこで楽しむことのできる台湾茶とはどのようなものなのでしょうか。
最近では、日本国内でも台湾茶を扱うカフェを見かけるようになりましたが、その知名度はまだそれほど高くないかもしれません。

台湾茶のルーツは中国茶にあります。

烏龍茶の産地として有名な中国・福建省から苗木が持ち込まれたことが始まりです。製茶法についても、福建省の指導者によって伝えられ、当初は中国式のお茶づくりが行われていました。

しかし、中国と台湾では気候や環境が異なるため、次第に台湾独自の製法や加工方法などが考案されるようになりました。その結果、中国茶とは違った特有の風味と製茶技術を持つ「台湾茶」として確立されました。
以下に代表的なものを3つ紹介します。

凍頂烏龍茶(とうちょううーろんちゃ)

名前のとおり、南投県・凍頂山で栽培されている銘茶です。
”凍頂”という漢字から、極寒の地を連想してしまいがちですが、実際は美味しいお茶を生産するのに適した、一年を通して温暖な気候に恵まれた地域です。

美肌や健康に嬉しいビタミンCを豊富に含んでいるほか、脂肪の吸収を抑え、分解を促進するポリフェノールも含有しているため、美容を気にする人々のあいだでも高い人気を誇ります。

凍頂烏龍茶の特徴は、中発酵による濃厚な香りです。台湾茶の世界では、香りがとても重要視されており、細長い形状をした「聞香杯(もんこうはい)」と呼ばれる特殊な茶器も存在します。一杯めはこの器にお茶を注いで、芳醇な香りをじっくりと堪能するのが台湾流。

聞香杯のイメージ写真
中央に映る背の高い器が「聞香杯」

一方で、味わいは爽やかで飲みやすく、台湾茶を初めて試す方にもおすすめの種類です。

東方美人(とうほうびじん)

発酵度が高く、紅茶に似た味わいを持っています。
味や香りは、完熟した果物や蜜に例えられることが多く、全体として華やかな印象を与える種類です。

このお茶の最大の特徴は、「ウンカ」と呼ばれる害虫の被害を受けた茶葉を使用する点にあります。ウンカに噛まれた茶葉は黄色く変色し、その過程で独特の風味が生まれます。
もともとは、食害に遭った茶葉を諦めきれずに利用したことが始まりでした。しかし、意図的にこの状況を作り出すには、無農薬であることはもちろん、ウンカの飛来も自然の生態系に依存するため、大変な手間と労力がかかります。

名前の由来も非常にユニークで、諸説あるものの、イギリスのヴィクトリア女王が名付け親という説も。グラスのなかで五色に輝く茶葉の美しさに感動した女王が「アジアンビューティー(東方美人)」と名命したという逸話が残されています。

高山茶(こうざんちゃ)

標高1000m以上の山で収穫された茶葉の総称です。
台湾茶のなかでも特に知名度の高い「阿里山」や「梨山」などがこれに含まれます。

品種によって味わいや香りに違いはあるものの、気温差の激しい高山で育まれた茶葉は、どれもすっきりとした香りと上品な甘さがあり、まろやかな風味が特徴です。
一般的に、生産地の標高が高ければ高いほど希少価値が上がり、価格も高くなる傾向にあるのですが、その豊かな香りと独特の味わいは多くの人々を魅了し、需要が絶えることはありません。

また、厳しい環境で育てられた茶葉は、平地で栽培されたものに比べてアミノ酸が多く含まれるため、コラーゲンの形成や促進を助け、肝機能を向上させる働きも期待できます。

台湾らしさ溢れる茶芸館で台湾茶体験を

ここまで、フォトジェニックなだけじゃない、奥深い茶芸館の世界についてご紹介してきました。また、台湾茶の魅力は美味しさだけでなく、高い健康効果とユニークなカルチャーを持ちあわせている点にもあることをお伝えしてきました。

しかし、近年台湾では、日本でも大ブームになったタピオカミルクティーを筆頭に、カップ入りの持ち帰り用ドリンク「手揺飲料(しょうやおいんりぁお)」が大流行中。こうしたブームに象徴されるように、のんびりとお茶の時間を楽しむ文化から、スピーディーなライフスタイルへと移行しつつある傾向も見られています。

伝統的な習慣が変わりつつある今だからこそ、古き良き時代の趣を感じることができる茶芸館は、台湾を訪れる際にぜひ足を運んでいただきたい場所です。台湾の歴史や文化に触れる貴重な機会として、きっと素晴らしい体験が待っているはずです。

▽ 【あわせて読みたい】台湾旅行に行くなら
カラダ漢方スタッフが台湾を訪れた際の記事はこちらから